笠間作家 新島佐知子さん

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先日altoyo横浜元町店に、笠間からはるばるお越しくださった新島さん。
とっても優しくて柔らかい雰囲気の方で、楽しくお話しさせていただきました。
新島さんのうつわは、使う人への真摯な姿勢や優しさがそのまま現れていて、あったかい気持ちにさせてくれます。

今回はそんな新島さんに、陶芸を志したきっかけや想いなどインタビューさせていただきました。
ジャンル問わずものづくりに携わる方は、特に共感するお話がたくさんあると思います。

目次

プロフィール

2003年3月 金沢美術工芸大学 製品デザイン学科 卒業
2003年4月〜2016年3月 工業デザイナーとして働く
2018年3月 茨城県立笠間陶芸大学校 陶芸学科 卒業

 〈 奥田製陶所内スタジオnido入所 〜2020年3月 〉

2019年12月 個展・回廊ギャラリー門(笠間)
2020年3月 個展・笠間工芸の丘
2020年11月 笠間formation:形の精神、ギャラリー緑陶里(益子)
2021年3月 かさまとましこ〜Kawaii〜展

Q&A

ものづくりを目指すようになったきっかけを教えてください。

小さい頃から図工や手を動かして何かを作ることが好きだったことが大きいですね。
高校まで普通科に通っていましたが、大学へ進学する時に美大に行ってものづくりを学びたいと思い、本格的に目指すことにしました。

前職では車のデザインされていたそうですが、そこを目指したのはなぜですか?

周りからのすすめで前の会社に就職しました。
雑貨・家電のデザインをやりたかったのですが、「車内は家具でもあり家電でもあるから、いろんなジャンルのデザインができる。やりがいがあるよ」と教授に勧められて、ですね。

陶芸の道を目指そうと思った出来事はありますか?

これだ!という出来事はなく、仕事を続けていく中で少しずつ芽生えた気持ちなんです。
インハウスデザイナーだと、一連のものづくりの流れの中で一部分にしか携われないんです。
その中で、「自分の手で一から作ったものを世に出したい」という気持ちが芽生えました。
一番初めは愛知(瀬戸・名古屋)の陶芸教室に半年通っていました。
そこで土に触れていく中で、土の魅力に惹かれていったことも大きかったです。

陶芸を始めたばかりの時に難しいと感じたことはありますか?

やればやるほど難しい、けど面白いですね。難しいから面白いというか。
一言で言うと、土に寄り添うことですかね?
土の状態を見ながら、土の素材の特性をよく知って、寄り添って制作していくことが難しいと思いました。
他の素材はある程度自分のペースで、作ることができるように思います。
でも陶芸は土のペースに合わせながら、自分のやりたいことをこめていく感じなんです。
土は生きている感じがして、お互いに寄り添いつつ作陶していく。
自分のペースだけではできないので難しいです。
いろんな工程もそれぞれ技術が必要なので、そこも難しいですね。

ものづくりへの思い、向き合う姿勢、大事にしてることなど教えてください。

「丁寧に作ること」ですね。
フワッとした表現ですが、「まごころ」ですかね?
まごころって丁寧なものから伝わると思うんです。
だからとにかく丁寧に作ることを心がけています。
自分で作っているときは、自分が欲しいもの・作りたいものを作るようにしていますね。

陶芸一本で食べていくことへの不安や葛藤はありましたか?

本格的に陶芸の学校に入る前は、「陶芸家として陶芸一本で行かなければいけない」と思っていました。
時代もあるし、元々陶芸一家に育ったわけでもないですが。
今はその考えが変わって、陶芸と仕事を半分ずつやることが、一番自分の制作が気持ち良くできるリズムなのかな?と考えています。
陶芸だけで生活を立てなければならないという気持ちは無くなってきましたね。
今は生活基盤はきちんとありつつ、その上で制作できる環境というのを自分の中で模索しながらやっています。

陶芸と仕事を半分ずつでもいいんじゃないか?と考えが変わったきっかけはありますか?

学生時代に笠間で作家さんや先生と話していく中で、
今はうつわが飛ぶように売れる時代じゃないということ、自分の制作をいかに続けるか、そういう環境やリズムを作っていけるかなど、
「とにかく陶芸を続けられる環境を第一に考えてやっていった方がいい」とアドバイスをもらったことがきっかけです。
確かにそうだなと納得しました。陶芸一本でやっている方は本当に尊敬しています。
今は折り合いをつけてやっている感じですね。
「続けること」と「陶芸を嫌いにならないこと」。
ライフワークとして、ただ売って消費していくだけだったら、なんで陶芸をやってるんだろう?と疑問が出てきてしまうと思うんです。
自分の作品も大事にできなくなったらどうしようという気持ち、好きだったものを嫌いになりたくないという思い。
今はそういう気持ちを大切にしています。

楽しいときや、夢中になれる瞬間はありますか?

ありますねー。
全工程が楽しいとか、いつも楽しいわけではないですし、たまに「今日はいいやー」とか。笑
私的には、土に触れると心が健やかになれるんです。
日常から離れて、自分の世界に没頭できるのは楽しいですね。

陶芸家としてこれからの目標はありますか?

独立して4〜5年経ち、笠間の中ではお店に置かせてもらったり、人目に触れる機会が増えてきました。
でも、まだまだ他産地・他県にいけていないので、もっと多くの人に触れる機会を増やしたいなと思っています。
あとはやっぱり、陶芸をこれからも続けていきたいですね。

新島さんのうつわは、緻密な絵付特徴だと思うのですが、昔から絵を描くことは好きだったんですか?

小さいときから絵を描いたりしていましたが、習ったり、ずっと描き続けていたりというほどではありませんでした。
今が人生で一番絵を描いていますね。笑
好きな作家さんは、茂田井武さんや奈良美智さんが好きです。
優しくて想像力掻き立てるような絵が好きで、絵本も好きなので、影響されているかもしれないですね。

絵柄の着想やヒントはどこから得ているんですか?

伝統的な小紋柄と、自分のオリジナルを組み合わせて描いています。
あとは、自分の中の思い出や記憶を辿って・・・。
モチーフは子供、動物などが多いです。
可愛らしいずっと見ていたくなるような、のどかなな風景を描きたいなという気持ちで描いています。
手にとってちょっとニコッとしてもらえるだけで嬉しいですし、ご飯を食べるときにニコッと楽しんでもらえるだけで嬉しいです。笑

ポップな絵柄に、渋めな土味を合わせていて、そのギャップも素敵だなと思うのですが、そこは狙って作られているんですか?

そうですね。キャラクターだけじゃなくて、焼き物としてみてもらえるようにしたいということ。
あとは、新しいものと古いものの融合が好きなので、土らしい生地感に絵を乗せて作っています。

最後に

新島さんのお話、いかがでしたでしょうか?
わたしは共感するエピソードをたくさん伺うことができ、もっともっと深く聞きたいなーと思いました。
改めて作ることについて考えさせられる、素敵なお話でした。
うつわを含め作るものには、作り手の考えや思い、人柄が出ると言います。
新島さんのうつわは、まさにその通りでした。
お話の中でもいくつかキーワードが出ていた、「続ける」、「丁寧」、「まごころ」。
じっくりお話を聞いて、改めて新島さんのうつわを見て納得でした。触れた時のぬくもりを、ぜひみなさんにも感じていただけらと思います。

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