「そこに花が咲いたような」という表現がぴったりな加藤芳平さんのうつわ。
普段は花柄のものを手に取らないタイプなのですが、加藤さんのは一目惚れして購入!
牡丹花ゆらり細湯呑赤と、粉引地牡丹6.5寸丸皿 青を愛用中です。
(粉引地牡丹6.5寸丸皿 青は、スタッフのおすすめで紹介しております。うつわ選びの参考に読んでみてください。)
特に湯呑は、指の一本一本にフィットする曲線に感動しました!
見た目だけじゃない、使う人にとても親切なうつわを作られている加藤さんに、今回はじっくりとお話を伺いました。
プロフィール
1990年4月 岐阜県立多治見工業高校デザイン科 入学
1993年4月 名古屋造形芸術短期大学プロダクトデザインコース 入学
1995年4月 多治見市陶磁器意匠研究所 人材育成コース
1997年4月 たくみ窯・黒岩卓実師に師事
2000年4月 松泉窯にて独立
2009年4月 美濃焼伝統工芸士 資格取得
Q&A
- 元々ものづくりがお好きでしたか?
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そうですね。親父が型を使った機械で作る量産の製陶業をしていたことと、街自体が焼き物の産地だったこともあり、もの作りは身近な存在でした。
- 母方の叔父に憧れていたと伺いましたが、どこに魅力を感じていましたか?
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親戚もみんなもの作り関係の仕事をしている人が多いんですけど、母方の叔父がとにかく手先が器用な方だったんです。
街の行事や祭ごとがあると、1人で手作りで祭道具や櫓を作ってしまうような凄い人だったんです。
実は親父は不器用でして、母方の親戚に器用な方が多いんですよ笑
なので自然と僕の方が家の修理とかするようになって、器用になっていったっていう感じですね。 - 高校・大学とデザイン関係を学ばれていたそうですが、どんな学生時代を送られていたんですか?
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焼き物の街なので窯焼きの息子は工業高校に行くのが昔から当たり前。なので僕も多治見工業高校に行きました。
その時はまだ家の仕事をするか定まっていなかったことと、でもサラリーマンじゃ無いだろうなーと思っていたのでデザイン科に。やんちゃしたりして結構楽しい学生生活を送ってましたよ。笑
その後は多治見工業高校に、窯業専攻科という2年だけ陶芸を学べるところがあって、そこに進もうと思ってました。
担任の先生に相談した時に、「もうちょっといろんなものを見た方がいいんじゃないか?」と勧められ、両親に相談して名古屋造形芸術短期大学プロダクトデザインコースに進むことにしたんです。
プロダクトデザインなので、土・金属・木などいろんな素材を触ることができました。でもやっぱり土が一番しっくりくるなと思って、陶芸の道に進むことに決めました。
大学卒業後は陶芸について専門的に学びたいと思い、多治見の陶磁器意匠研究所ってところでしっかり勉強させていただきました。 - 加藤さんのうつわの特徴は水彩画のような釉薬の表現だと思うのですが、今のような表現方法になったきっかけを教えてください。
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最初は織部が好きなので、織部で色々やってみましたが、なかなか上手くいかず・・・
織部をやっている人も多いですし、自分なりの織部とも思いましたが確立するのが難しかったですね。
それと並行してやっていた、模様を掘り込んで織部をかけるというのが、なんとなくこの方向かな?という兆しというか匂いがしたんです。
なので最初は織部の緑を透明釉でまとめるという感じでした。
でも、それも確立できず、うーん・・・という感じ。
そんな時に陶秀さんの会長さん(その当時の社長)が、澤田池塘人の作品集を買ってくれたことがあったんです。
その中に赤絵の牡丹がパーンとある作品がありまして。
それをみた時に、これ彫りでやったらなんかならないかな?と。
織部じゃ牡丹の赤じゃないし、やっぱり赤がいいなと思って、今のベースとなる赤の釉薬を乗せて焼いてみたら、なんかよかったんですよ笑
あ!これかなってところから今の牡丹シリーズが始まったんです。色に関しては、先入観で牡丹=赤じゃないと!と思っていたんですが、ペアでも買えるように青を始めました。
そこから黄色・緑・紫と増えて、現在にいたります。笑 - うつわの形へのこだわりや大切にしていることを教えてください。
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やっぱり今の時代は重さや形が大事だと思います。食器は食器棚にしまう時に重ねないといけないので、枚数重ねてより重くなってしまっては大変ですから。
重ねた時に口元が当たらないことも気をつけていますね。
僕のうつわの場合は特に見た目で入る方が多い。でもそれだけだと使われなくなってきてしまうので、そこは使いやすさがないと勝負できないだろうなと。
特別な日に使ううつわも大事だと思うんですけど、僕としては出来る限り日常でより多く使っていただきたいんです。作り手としては活躍する場が多い、出来る限り多く楽しんでもらう時間が多い方がベストだと思っているので、使い心地が良くないと飽きられてしまうんじゃないかなと。 - 陶芸をしていて楽しいときはありますか?
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そうですねー。最終的に自分が好きで作ったものを、お客さんが使って喜んでくれているのを聞くのが一番ですかね。
より自分の思うものを表現したいとオブジェなどを作られる方もいますけど、僕の場合は使ってもらってなんぼだと思っているので。
でも100%使い手のことを考えているわけではなくて、その中に自分の思いも込めるんですけど、それが強すぎて使ってもらう頻度が落ちるのであれば、そこは調整しなきゃいけないと思います。
食器である以上、出来る限り毎日の食卓で活躍できる方が嬉しいです。
そういうお声をいただいたときになんか「やったな」「間違いじゃなかったんだ僕のやっていたことは」って思いますね。
人間ってどっかで不安なんですよね。自分自身に言い聞かせてやり続けられるほど強くないですし。笑
だから褒めてくれる人がいると「よかったー!」って安心しますよね。 - これからの目標や夢ありますか?
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伝統工芸士なので後継者育成とかやっていかないとと言われることがありますが、陶芸が好きじゃなきゃやれないんで。
あと今僕のやっていることって加藤芳平としての焼き物なので、次の世代に残した方がいいのかというと別にいいのかな?という気がしています。笑
例えばもし、息子が陶芸の世界に行きたいと言ってきたら、僕の真似はしないでね?これは僕の武器であって、息子だからといってあげられないよ?と。
他人の人でもあげないよ?と言いますね。笑
できれば僕のやっていることを参考にして、新しいことを作っていってもらうことの方が喜ばしいですね。
参考にしたいので教えてくださいという人がいたら、全然見てやってもらっていいと思います。
あとは、ちっちゃなことからコツコツとって積み重ねて続けていくことですかね。 - たくみ窯・黒岩卓実さんの元で教わった中で特に大切にしていることや印象に残っているエピソードを教えてください。
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研究所を卒業した後に、すぐ家業というのは仕事の幅が広がらないなと思っていて、自分は親父のやっている型を使った量産ではなく手作りをやりたいなと考えていました。
そこで、ちょうど黒岩さんのところの募集があったので雇っていただくことに。
元々やっていらした織部と、美濃の白化粧した生地に柔らかいタッチの赤絵をやられていて。
その点で、黒岩さんが一歩二歩抜きん出ていたんです。
僕自身も織部への憧れもありましたし、非常に面白い赤絵もされているということで、たくみ窯・黒岩卓実さんのところで勉強させていただいていました。一番最初の条件で「うちで雇うのは長くて3年だよ」と。
3年のサイクルで卒業して、新しい人を入れて・・・と回していくと言われました。
「うちで学べることは大体3年で身に付く、3年以上いても仕事に慣れすぎてしまってつまらなくなってくるし、面白いものも生まれてこないだろう」という黒岩さんの考え方。
衝撃でしたねー。職人ってしっかりそこに根付いてっていうものと思っていましたから。
若い僕らの仕事は、タタラで赤絵をつける前の生地を作って焼くっていうことをしてました。
一番言われたのは、「まだ本当の職人になりきれていない若い人たちが、なんとか上手く作ろうという意欲を持って、一生懸命作ってエネルギーを注ぎ込んでくれるからこそ、魅力のあるものができる。それを生地として上げてほしい。それもあっての3年」ということ。
僕は自分自身なので入れ替わりができないですし、3年経ったら生まれ変わることもできない。笑
でもどこかでフレッシュな気持ちは忘れちゃいけないと思っているし、同じものを作るにしても前ものを真似するんではなく、ほんのちょびっとでも良いものを作れるように。
前と同じことをするのではなく、ちょっとでも新しく作り方を工夫したり。
少しでも良くするように努めて作っていくことを大事にしています。
結果として、もしかしたら前の方が良いものだったかもしれないし、全然変化が見られなかったとしても、そこは心がけるようにしています。
それがもの作りの基本、ものを作る者としての基本なのかなと思っています。3年間はコテコテにしごかれたというか、とにかく走り回っていました。笑
休憩時間は毎日しっかりとる。ただし限られた時間の中でどれだけのことができるか、長距離じゃないぞ短距離だぞ!っていう意識で、走り続けた3年間だったと思います。
そこで体力と根性は鍛えられたのかなと。
スピード感を持ってやらないと、出来上がる品物自体もちんたらしたものになっちゃうというか、緊張感も無くなっちゃうというか・・・そういうことですよね。
この3年間は今でもずっと根底に残っているし、今でも年に数回夢に出ますよ笑
僕の焼き物に関する根本的な部分はその年間で培われたんだなと思います。
最後に
加藤さんのお話いかがでしたか?
わたしは「作る」ことに対する、まっすぐで直向きな姿勢に感動しました。
わたしは今Webやグラフィックデザインを仕事にしており、陶芸とは少し違った「作る」をしていますが、自分は何をしているんだろう?何ができているんだろう?と見つめ直すきっかけをいただきました。
お話を伺いながら少しウルっとする場面も・・・。
1人でこなしている加藤さんだからこそ、大切になさっている「フレッシュな気持ち」。
もし上司や同僚がいたら、周りから言ってもらえたり叱ってもらえたりしますよね?
それを1人で、自分を律することはとても大変なことだと思います。
工夫を続けること、変化を積み重ねること。
わたし達も日々の生活に取り入れていきたいですね。
最後に聞かせてくださった黒岩さんとのお話を聞いて、わたし自身はちょっと反省です。
せっかく大好きな仕事ができている今なので、明日からまた気を引き締めてもっと頑張ります!
加藤さんのうつわは本当に使いやすい形で軽いですし、明るいデザインなので食卓を楽しく彩ってくれますよ。ぜひ一度触れてみてください。
横浜元町店にもご用意ございますよー。