絵描き 田中光枝さん

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先日のaltoyoでの個展が大盛況だった、田中光枝さん。
店内を彩ってくれた作品たちが、たくさんのお客様の元へ旅立ちました。

この世界のどこかで、誰かのお気に入りとして、大事な空間に作品が飾られること
作品をしみじみ眺めて、それぞれの見方で楽しんでもらえること

ものを作る楽しさ、そしてその先にある喜びは、誰かの手に渡ることでようやく実を結び、新たなる原動力に変わるのだと思います。
そんな作家さんとお客様を繋ぐお手伝いが出来ることは、展示会場としてとても喜ばしいことです。

田中さんは、個人的に仲良くさせてもらっている私から見ても、ぽんわりとした可愛らしい雰囲気を纏いながら、とてもアーティスティックな面を併せ持つ素敵な女性です。
今回、そんな田中さんの頭のなかは一体どんなふうになっているのかな?という個人的な興味もあり、個展のエピローグ的インタビューを掲載します。
田中さんをご存知の方もそうでない方も、ぜひ“ものづくりをする人”の頭のなかを一緒に覗いてみましょう!

目次

プロフィール

田中 光枝
多摩美術大学絵画学部油画専攻卒業
水彩画を中心に油彩画、オブジェなどの制作をしている。日常生活の中から汲み取ったマテリアル、書物から得たインスピレーションを再構築させて反復と実験を繰り返している。

Q&A

最近の制作で使われている画材や素材、そしてそれらを選んでいる理由を教えてください。

主に水彩絵の具にケント紙です。
アクリルだとすぐ乾くので焦ってしまうのですが、水彩だと後から水で修正できたりします。修正可能で焦らず描けるという点で油彩と近い感覚で色遊びが楽しめるのだと思います。

作品のモチーフは、古典絵画や小説などを咀嚼し、ご自身の解釈やイメージを通して再構築するものが多いですよね。そういった方法を取り入れたきっかけや、モチーフ選びのポイントを教えてください。

きっかけは特になく、良いものに触れると、ジャンルは何であれ制作意欲が湧くのです。
絵画鑑賞と読書は、物語というパッケージの中を航海するイメージです。その旅路で引っかかったものをモチーフにして昇華させる、それは幾重にも重なったレイヤーをフラットにする必要不可欠な作業です。

かわいいたぬきさんの陶芸作品も作られていますが、絵を描くことと立体を作ることには何か違いがありますか?

平面と立体とでは使う脳が微妙に異なるように感じます。具現化の手段に幅がある方がバランスがとれる気がします。

どんな時に、どのようにインスピレーションが沸きますか?

散歩している時に音や匂いが媒介となって、ある記憶と結びついて時空がぐにゃりと歪むような感覚が起こることがあり、それがインスピレーションが湧くということなのかなと思います。

制作をするうえで、これまでに影響を受けた人や物事はありますか?また、好きな画家や作家、アーティストがいたら教えて下さい。

自分の身近にいる、ものを作っている、何かしら表現をしている人たちからは少なからず影響を受けていると思います。流星群や皆既月食などの事象は記憶に刻まれます。マティス、リュック・タイマンス、レイモンド・カーヴァー、小川洋子、須賀敦子、フィッツジェラルドが好きです。

集めているものや、気付いたら集まってしまっているものは何かありますか?

クッキー缶が気付いたら集まっていました。あとは色んな人からいただいたヴィンテージのカップです。

こどもの頃になりたかったものは何ですか?

絵描きさん、ケーキ屋さん、お花屋さんです。

日々の生活のなかで、大事にしていることや欠かせないこと(もの)があれば教えて下さい。

機嫌よく生きることです。そのためにお気に入りのうつわやカップを使ったり、絵を壁に飾ったり、おいしいものを食べたりしてにんまりしています。あとは読書と気の置けない友人たちとのおしゃべりです。

今回altoyoに展示された作品は、どういったコンセプトのもと制作されましたか?

altoyoさんの空間は壁が漆喰だったり、アーチがあったり教会のような雰囲気があるので、その空間を生かした展示を意識しました。そういったコンセプトのもと、宗教画や古典絵画のオマージュ作品、聖書の挿絵の模様と自分の好きなパターンを組み合わせ、あくまで現代に昇華させたいと考えました。DMに書いていただいた紹介文がまさに絶妙の表現でしたので、うれしかったです。パッチワークのように組み合わせた作品は、自分のなかで新しい試みだったので、じっくりと鑑賞していただけたなら嬉しいです。

展示を終えて、今のお気持ちは?

たくさんの方に見ていただいて感謝の気持ちでいっぱいです。通行許可証が発行されて、扉がひとつ開いたような気がします。
また次に向けてコツコツと制作し続けていこうと思います。本当にありがとうございました。

最後に

田中さんの作品はオマージュ的意味合いを持って描かれているものも多く、元の作者の主観がそぎ落とされ、よりシンプルに洗練された結果残ったものが紙の上に現れています。
そのシンプルな表情やタッチが、時におかしみに、時に“本当はもっと躍動感があったはずなのに、ない ”というようなズレを生み出し、これは真面目なのかふざけているのか?と見る人によって様々な考察ができる味わい深い絵だと、私は思っています。(ご本人は至って大真面目なはず)
そしてとにかくお洒落…!その一言に尽きる気もします。
いつか有名店のお菓子のパッケージやラッピングなどに使われる日もそう遠くない…そんな期待を抱きつつ、これからの益々のご活躍を楽しみにしています!

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